２０歳の夏

 

春、桜の咲く頃がいい、と、

 

3月28日を開店の日と決めた。

 

もう逃げない

 

と決意した日

 

JAZZ BAR  Misty   グランドオープン

 

朝から雨だった。

 

（あー1日終わった）

と、思った日を今でも憶えている。

 

2日終わった。

3日終わった。

 

1週間経った。

 

と、1日1日数えていた。

 

 

10年後なんてくるのだろうか！？

 

10年後なんて想像すら出来なかった。

 

10周年は矢沢永吉でもよんじゃう！？

なんて考えていたほど未知の世界だった。

 

 

Mistyはまだある。

 

あれから35年。

正真正銘の老舗だ。

 

 

いつか、

 

「あの時代は良かったなあー」

 

と思えるようになりたいと、

 

独り

 

で頑張った。

 

学んだことは、はかり知れないけれど、

「あの時代は良かった」と、思ったことはない。

ただただ辛かった。

 

やりたいことではなかった。

やらなくてはいけないことだった。

 

「向いている」

「天職」

 

と、人にはよく言われた。

 

（そうなのかな〜？）

 

何度となく人間不信になった。

 

働くのは好きだったが、

 

人に会いたくない日は数えきれない。

 

 

（もう逃げない）

と決めたので、定休日以外に休んだことはないが、

学歴もない知識もないお金もない自分が嫌いだったのだ、

人を好きになれるわけがない。

 

 

夜、お店に立ち、

「いらっしゃませ」

と、小さな声で言った瞬間、

 

「あっ！？今日はじめてしゃべった」

 

と思ったことが何度もあった。

 

 

頑張れば頑張るほど、

苦しかった。

 

 

沢山の人と出会い、助けられ、守られて

そのままで愛されていた。

 

と気付いた時、号泣した。

独りじゃなかった、最初から。

 

そのままの自分を受け入れ、
許した時、

 

世界が変わった。

 

 

今では約束がなくても人と話さない日はない。

 

メールもある。

電話もくれる。

 

人と繋がれることに心から感謝をする。

 

あの頃には想像すら出来なかった世界を生きている。